『騎士団長殺し』のそばにあった本『村上春樹 翻訳 ほとんど 全仕事』の紹介

今回は村上春樹 翻訳 ほとんど 全仕事』という本をご紹介です。
  
村上春樹 翻訳(ほとんど)全仕事

村上春樹 翻訳(ほとんど)全仕事

 

 Amazonより

 

この本との出会い

 
梅田のでっかい紀伊国屋書店内をぶらっと歩いていて、まず騎士団長殺しが目に入る。僕は、村上春樹の本は割と読んでるけど、何が言いたいのかよくわからないから、最近は読みたくないなーと思っていた。
 
そしたらそのそばに、村上春樹 翻訳 ほとんど 全仕事』が。手に取って、まえがき を見てみる。僕を惹きつける文章が目に飛び込んでくる。
 
だいたいにおいて、僕は注文を受けて小説を書くということをしない。書きたくなったら書くし、書きたくなければ書かない(そのかわり書くときには脇目もふらずに集中して書く)。……おかげで編集者にはずいぶん苦情を言われたけど、気にせず好きなようにやっていたら、そのうちに向こうも「しょうがない」と思ってあきらめてくれた(たぶんあきらめてくれたのだと思う)。(5、6ページ)
 
そうなのか。知らなかった。彼は自分を大切にしている。編集者の言いなりにはならない。これまで好きに書いてきて、今世の中でたくさん読んでくれる人がいる、それで食べてゆける。僕の求める理想ライフではないか。
 
買った。
 
この本を読んで、紹介したくなった所はたくさんあるので、今回は本の内容紹介に焦点を絞ってまとめてゆきます。
 

何が書いてあるのか

 
この本は大きく2部構成で、
 
村上春樹が初めて翻訳作品を出した1981年~2017年現在に至るまでの、70点くらいある作品を彼のコメント付きで紹介しています。
 
翻訳家 柴田元幸氏と村上春樹の対談を収録してます。
 
どちらもおもしろい。但し一つ言っておこう。これから翻訳家になろうという人が教科書的に読む本ではなさそう。あくまで村上春樹という一人の作家の翻訳家観を感じて楽しむ本、て感じ。
 
よし、①からいこうか。缶ヶ江メグルが気になった翻訳作品が3つある。
 

気になった翻訳作品3選

『ニュークリア・エイジ』
 
ティム・オブライエン著、上下巻(長篇小説)、1989年10月 文藝春秋より。

 

ニュークリア・エイジ〈上巻〉

ニュークリア・エイジ〈上巻〉

 
ニュークリア・エイジ〈下巻〉
 

Amazonより  

 

村上春樹のコメントを引用しよう。
 
…とにかく作品に惚れ込んで訳した……内容的に言えば、相当荒っぽい小説です。……ティム・オブライエンというのは、何よりもまず自分の心を直視しようとする作家です。余計な回り道をしない。物語を武器として、まっすぐものごとの核心に切り込んでいく。……彼はベトナム戦争に従軍しているんだけど、従来の戦争小説とはまったく違うアプローチをしている……(29ページ)
 
うーん、惹かれるなあ。多分、クセが強くて読みにくいんだろうなあ。でもそういうのって、「俺はこう思うんだ」という主張がすごくはっきりしていて、読んでてその人の考え方がビリビリ伝わってくるんだよね。たまらんね。
 
僕はこの時、村上龍を思い浮かべた。彼も僕の好きな作家の一人。小説読むやん、改行あんまないし、会話も「」無い事多いし、ぶ厚いし、なんだこの人は、読者を拒んでいるのかと思いたくなる。「読みたい奴だけついてこい、俺のゼンリョクを見せてやる」的な。
 

f:id:kotoba2kai:20170513235849j:plain つんつん(サンダース ♀)の、

f:id:kotoba2kai:20170513235938j:plain スパーキングギガボルトおぉぉーー!!

f:id:kotoba2kai:20170514000033j:plain ズバアァァン!!!

ポケットモンスター ムーンより

 
これはポケモンサンムーンのZ技(ゼットワザ) だけど。ZはゼンリョクのZ
 
ああつい脱線するな。ゼンリョクを感じるの、僕は好きだ。あと、ティム・オブライエン自身が戦争を体験している所が◎ 想像で書いてない。そこも好き。読みたい本がたまっていくばかりだ。

 
フラニーとズーイ
 
J.D.サリンジャー著、長篇小説、2014年3月 新潮文庫より

 

フラニーとズーイ (新潮文庫)

フラニーとズーイ (新潮文庫)

 

 Amazonより

 
このサリンジャーという人は、ライ麦畑でつかまえてを書いてる人。読んだことないけど、本のタイトルは何故か知っている。また村上春樹のコメントが僕を惹きつける。
 
この小説の文章はむちゃくちゃ面白いんです。たとえばフラニーとズーイが宗教論議をする場面では、ズーイはありとあらゆる語法のテクニックを持ち出し、ありとあらゆるパラフレーズを展開し、なんとかフラニーを説得しようとする。……その説得のロジックというか、言葉の技法がなにしろ素晴らしい。まさに感動的です。とにかくサリンジャーは文体という戦場に焦点を絞って、ほとんど一点突破で小説をどんどん前に進めていこうとする。ここまで文章に凝るのかと、言葉を失ってしまうくらいだ。(80ページ)
 
毎度引用長くて申し訳ありません。でも紹介したい。
 
パラフレーズがわからない。調べた。
 
パラフレーズ [paraphrase] 〔名詞〕
ある表現を他の語句に置き換えて、わかりやすく述べること。
デジタル大辞泉より
 
なるほど、フラニーがわかるように、言い換え表現を連発するということか。
 
ロジック好きだな。おそらく小説は論理攻めで進んでいくんだろう。なんか1こめに紹介したティム・オブライエンと似てるな。サリンジャーは文体一点突破で攻めまくる。突き詰めていく系、気になるなあ。
 
一点突破で思い浮かんだのは、田中芳樹著の『銀河英雄伝説だな。
 
1巻の最初で、帝国軍同盟軍が宇宙で戦艦同士やりあっている時、帝国軍元帥ラインハルトが乗った戦艦が、多数の同盟軍の戦艦に取り囲まれる。万事休すかと思われたが、ラインハルトは敵艦の各個撃破を指示し、見事窮地から脱する。
 
各個撃破。一点突破。そんな似てないな。まあいいや。『銀河英雄伝説』は全10巻で読み応えバッチリ。
 

 
 
キャラクターが濃い。ヤン・ウェンリーはみんな好きだと思うけど、ロイエンタールの最期が僕好きだ。気の毒だが、かっこいい。
 
一体どれだけ脱線するんだ。アマゾンの欲しいものリストフラニーとズーイ追加。

 
『Novel 11, Book 18 ノヴェル・イレブン、ブック・エイティーン』
 
ダーグ・ソールスター著、長篇小説、2015年4月 中央公論新社より
  
NOVEL 11, BOOK 18 - ノヴェル・イレブン、ブック・エイティーン

NOVEL 11, BOOK 18 - ノヴェル・イレブン、ブック・エイティーン

 

Amazonより 

 

タイトルは、著者にとっての11冊目の小説、18冊目の著書という意味らしい。変わっている。謎めいている。村上春樹のコメントもそんな感じだ。
 
ダーグ・ソールスターは、ノルウェーを代表する作家。……彼の作品は世界三十ヵ国語に翻訳されているけれど、日本にはまだ一冊も紹介されていなかった。……ソールスターという作家の面白さは、スタイルが古いとか新しいとか、前衛か後衛か、そういう価値基準を超えて(というかそんなものをあっさり取っ払って) 作品が成立しているところだと思う。とても痛快で、そしてとてもミステリアスだ。こんな小説を書ける人は世界中探しても、あまりいない。(83ページ)
 
もう慣れました? 引用文の長さ。
 
この本は、謎の真打ち登場って感じだよね。
 
ドラゴンボールで言うと、人造人間が初めて出てきて、気配を感じ取ることができないし、気のエネルギーを使った攻撃が吸収されて効かない、強ぇぞ、なんなんだ奴らは! みたいな。
 

f:id:kotoba2kai:20170514011522j:plainドラゴンボール29巻(kindle版) よりスクリーンショット。右 気配がわからない。左 気を吸収する。

 
僕は小説はあまり読まないけど、もう気になってしまったし、そういうのは読んじゃう。また欲しいものリストに1こ追加。
 
この本は何かを突き詰めて、って感じじゃない。思わぬところから来るパンチのような、意表をついた感じ。これも缶ヶ江メグルの好みだ。一点集中とすかし攻撃。あしたのジョーに出てくる青山くんみたいだな。へへへ。ちょっとちがうか。
 
twitterより

 
はい、こんな風に翻訳作品が色々と紹介されています。第一部おわり。今回の記事はちょっと長くなりそうだ。

 

対談も面白い

 
対談では、ポロッと知らなかったことや、裏話が出てくる。こちらも3つ、紹介しよう。
 
村上春樹は小説家になる前ジャズバーを経営していた
 
有名なんですかね、これ。僕は全然知らなかった。ちょっと引用。
 
村上 僕は二十代の半ばからずっとジャズのお店を経営していまして。とても忙しくてそっちで手一杯で、小説家になるということはまったく考えていなかったんです。(88ページ)
 
google村上春樹 ジャズのお店」と検索すると、トップにNAVERまとめの記事が出てきて、詳しめに書いてました。
 
「ピーターキャット」って名前のお店を、東京の千駄ヶ谷でやってたみたいですね。
 
twitterより

 
ちなみに彼が初めて小説を書いたのが29歳の時。風の歌を聴け群像新人文学賞を受賞。
 
29歳か、自分と近いな。うらやましく思える。でもそんなこと思っててもしょうがないね。僕はブログを頑張る。
 
ダジャレの翻訳
 
翻訳する原文の中にダジャレが出てくる時、どうしたかという話。
 
村上 駄洒落の翻訳って、あれはなかなか難しいですよね。……ル=グウィンの『空飛び猫』の中に、赤ん坊猫が“human beings”って言えなくて、“human beans”って言うところがありました。これを僕は「にんげん」と「いんげん」って訳したんです。いちおう「豆関係」で(笑)。(172ページ)
 
うまい! 山田君、村上さんに座布団2枚持ってきてー
 
ヒューマンビーンズ。ハリーポッターに出てきそうなお菓子みたいだ。こういうのの翻訳を考えるのは楽しそう。
 
うん、ただそれだけなんだ。3つめいこう。
 
書評をでっち上げた
 
村上氏と柴田氏の会話が面白いので、長いけど引用しちゃう。
 
村上 そういえば、かなり昔のことですが、雑誌に書評を頼まれた時、存在しない本の書評を書いたことがあります。……自分で勝手に本をつくってしまって、その書評を書いたりしました。出鱈目なあらすじを書いて。
柴田 初耳。それはそのまま載ったんですか。
村上 載りました。……今だったら、グーグルとかアマゾンとかで調べられて、嘘だってあっという間にバレちゃうけどね。
柴田 衝撃的。
村上 そんなの、みんなやってるかと思ってたけど。
柴田 やってませんよ(笑)。            (181、182ページ)

 

天才肌かって思う。ほんとに雑誌に載っちゃうんだもんなあ。あれかな、まさか嘘の本とは誰も思わなくて、たまたま載ったとか。
 
柴田氏の常識人的ツッコミがいい(笑)。うーん、でも小説家だったら意外とできるものなのかな。できたとしても、今の時代、すぐバレるね。それもインターネットが発達したおかげ…グーグルさんとアマゾンさんにはお世話になりっぱなしです。これからもよろしくお願いします。
 
第二部、意外と早く終わった。今回はこんな面白い話が読めるよーっていうのをサラッと紹介したかったから、よかった。
 

おわりに

 
はい、村上春樹 翻訳(ほとんど)全仕事(←クリックするとAmazonのページにとべます)について、なんとなく内容伝わったでしょうか。外国の本の和訳を読んだり、実際に翻訳したりって全然日常でしないっすよね。
 
僕は、読んでみて新しい世界を1コ知ることができたな、よかった、て感じです。
 
もう一つ。騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編を読んでみようかと思った。多分、何が言いたいのかはわからないと思うけど、村上春樹書きたくて書いたものなら、ちょっと興味あるなってなった。
 
冒頭にお昼ごはんの話してたけど、日中用事で作業中断して、夜作業再開したから記事の中に時間のゆがみが生じております。すみません。
 
最後まで読んで頂きありがとうございます!ではまた!