又吉直樹『劇場』 文章表現を楽しむ

 

 

劇場

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 Amazonより

 

ちわっす。前回は登場人物の紹介をしましたが、今回は小説のなんでもない描写部分を楽しんでみようと思います。

 

又吉さんの独特な表現を楽しむ

 

僕は特に又吉さんの出るテレビ番組をよく見るわけでも、ライブとかのイベントに行くわけでもないです。でも、読んでるとこの人ならではだなって感じる文章があって、普段こういうことを考えたりしてるのかな、てなってちょっと面白いです。

 

酒の名前から殺し屋を想像する

 

これは主人公の永田が原宿で沙希と初めて出会った時に、2人で喫茶店に入ることになって、永田が何を話したらいいかわからず、店の棚に並んでいた酒瓶を眺めていて浮かんできたことになっている。一部引用しよう。

 

ズブロッカは汚い服に身を包んだひどい猫背で、何度も頭を下げ謝りながらナイフでブスブス肉を刺し、独り言をつぶやきながら地下鉄に乗って帰っていきそうだし…(22ページ)

 

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…ブラックブッシュは相手の身体を持ち上げコンクリートの壁にぶつけ骨を砕き死体の匂いがするまで繰り返しそうな名だ。(22ページ)

 

楽天より

 

知らないお酒の名前ばっかりだ。そして殺し屋を想像するとか、ブラックだなあ。又吉さんは太宰治とか芥川龍之介が好きって聞いたことあるから、そういう暗めの話を考えるのが得意なのかな。あっでも、ひとつ知っている名前のお酒も出てきたよ。こちら。

 

その人に、棚に並ぶ酒が殺し屋だったら誰が一番強いと思うかを聞いた。

「哲学だね、得意だよ」

その人はカウンターに両肘をつき、棚を見つめたまま何度か頷くと、「山崎」と言った。

「山崎?」

「はい、すごい強そうです」

 たしかに山崎は強そうだ。その一群の中で「山崎」という漢字二文字のラベルは、どの酒よりも際立って存在感が強かった。(23ページ)

 

 

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楽天より

 

山崎。言われてみると、確かに強そうだ。瓶も恰幅がよくてどっしりとしている。

 

普通の大人の4倍くらいのでかさがある大男で、鍛え上げられた肉体からは、想像もできない程の速さで相手の腹に半端ない重さのパンチを繰り出し、その一撃で内臓と骨を破壊し、殺してしまう。こんな感じか。そしてこんな大男か。

 

f:id:kotoba2kai:20170525041241j:plainちがうか。

 

 

なかなか殺し屋を想像するのは面白い。

あと、沙希が永田のよくわからない想像話に乗ってくれるとこがいい。哲学じゃないと思うんだけど、「哲学だね、得意だよ」って応じるところはキュンとくる。めちゃかわいいやん。紹介してて自分がこのシーン好きになってきた(笑)

 

サッカーゲームのチームメンバーを文豪にする

 

お次いきます。永田が沙希のアパートに住むようになって、永田が時間つぶしによくするサッカーゲームで、選手を自分で作って対戦できるのがある。プレイステーションらしい。

 

プレイステーションSCPH-7000本体 PS

Amazonより。懐かし。『ぺプシマン』ていうソフトがあってね、遊んだなあ。爆笑してたな。

 

ちょっと引用する。

 

僕はサッカー選手をあまり知らなかったので、近代文学の作家でチームを作っていた。フォワードは芥川と太宰のツートップ。それぞれの作風や文体をサッカーの能力に置き換えて自分だけが納得のいく形で数値化した。中盤には漱石や三島がいてサイドには泉鏡花中原中也がいた。(94ページ)

 

又吉さん、ネタに走ってるって思った(笑) 作風や文体を、選手の能力値にどう置き換えるのか想像がつかない。僕は近代文学の作家の本はほとんど読んだことがないし、サッカーも全然詳しくないのであまり書けることがない。でも読んでてなんとなく想像するだけでクスッとくる。試合中の場面をいくつか紹介しよう。

 

…中也からボールを受けた芥川は髪の毛を乱しながら快足を飛ばし、ゴール前で待ち構える太宰に右足でセンタリングをあげる。太宰はダイレクトでボレーシュートを炸裂させゴールネットを揺らす。両手の拳を強く握りしめた太宰が雄叫びをあげている。(102ページ)

 

…後ろから追いかけていった川端康成ロベルト・カルロスに背後からスライディングタックルをかます。ロベルト・カルロスが崩れるように前に倒れる。笛が鳴り、審判が川端にイエローカードを出す。川端は両手を腰に当てうつむいている。(107ページ)

 

フッ(笑) スポーツなんて全くしなさそうな作家がサッカーしてるのが面白いよね(ダジャレ言ってしまった)。

 

ただ、永田は夜から朝にかけてこのゲームをしていて、沙希は(もう大学を卒業していて、朝洋服屋で働き、夜近所の居酒屋でアルバイトしている) 朝メイクや朝食など準備を済ませて、出かけ際に

 

「永くん、がんばってね! どっちが勝ったか、あとで教えてね」(107ページ)

 

と永田に声かけする。もう、読んでいて胸が痛い。だから、文豪チームのサッカーのネタで思いのほか笑えない、小説読んでいると。そこが残念なような、いや別にそうでもないか。

 

おわりに

 

はい、おしまい! 僕は飛ばし読みしないもんで、どうでもいいとことかも気になったりする。むしろ、1つの物語として読むことよりもそっちに力入れて読む方かもしれない。同じ本読んでも人によって感じ方は様々ですよね。

 

どうでしょう、楽しんで頂けました? そうであると祈ってます。

 

最後まで読んで頂きありがとうございます!ではまた!