嵐山の旅館 渡月亭~お部屋入ってから夕食前まで~

「いらっしゃいませ。お名前は…」

「缶ヶ江です」

「缶ヶ江様。少々お待ちください」

そう言ってフロント係りの男性はカウンターの中に戻り、何やら確認している。男性は長身に見える。実際どのくらいの高さか覚えてないけど、細身でボクくらい(170cmくらい) ありそう。メタルフレームの四角いメガネをかけている。アニメ西遊記に出て来る猪八戒みたいな紳士然としている。

 

確認はものの数秒で終わり、猪八戒さんは戻ってくる。ボクらは靴を脱いであがろうとするところだった。

 

「スリッパをお使いください。ではお部屋のご案内の準備を致しますので、それまであちらで掛けてお待ちください」

 

 猪八戒さんは、フロア奥のロビーみたいな、応接・待合スペースを手で示した。4人掛けのテーブルが2つ、2人掛けのテーブルが1つある、小じんまりとした、大変和な趣のあるスペースだ。籐編みの椅子がある。でっかい。座ると、クッションがあるけど籐の硬さがよくわかる。ギシッっていう。

 ボクらは奥の4人掛けテーブルの籐編み椅子に座ることにした。

 

「すごいねー」

 ボクらの他にお客さんは見当たらず、あまりに静かなので、フクちゃんの声はひそひそ声である。

「うん。すごいねー。旅館だね」

 

 

5~10分くらいボーっとしたりちょっとしゃべったりしてたら、こちらに女将さんがやってきた。

「いらっしゃいませ。今からお部屋までご案内しますね」

 

若い。20代に見える。そして背が低い。女将さんとは言わないんだろうか、こういう場合。旅館のスタッフさんと言うんだろうか。

 とにかくその女将さんが非常口を教えてくれたりしながら、2階、24号室「保津の間」まで案内してくれる。カギを開けて中に入る。

 

「うわーー」

 2人で同じことを言う。ザ・旅館の和室。畳、掛け軸、障子張りのふすま、ローテーブル、座椅子、ひじ掛け。

 

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なんか一段高くなっているスペース。

 

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 素敵だ。ステキフロア、イン渡月亭。

「それでは抹茶とお菓子をお持ちします。抹茶はあったかいのと冷たいの、どちらがよろしいですか?」

 2人目を合わせる。

「え、どっちがいいかな。私は冷たいのがいいな」

「ボクも、冷たいので」

「かしこまりました」

 

女将さんが戻ってくる。

「失礼します」

「どうぞ」

テーブルに置かれる抹茶とお菓子。

 

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「ご夕食は何時に致しましょうか。7時からか、7時半からでお選びできますが」

 

 お腹も空いていたし、7時からで、と女将さんに伝える。

 

「お飲み物は何になさいますか?」

「あ、どうしよう…後で決めます、それでも大丈夫ですか?」

「はい。かしこまりました」

 

女将さんは 何かご質問などありましたら、内線電話でお呼び下さい、と言って部屋を出ていった。

 

「こんな本格的な抹茶、初めてだ」

 ボクは一口飲む。甘くない。でも美味しい。抹茶の味が口に広がる。

「美味しいね、抹茶」

 

「うん。泡が立ってるから美味しいんかな。メグルくん、お菓子も美味しいよ」

「どれ。うん、砂糖のお菓子? あっさりしてる。美味しい。こっちは甘くて、抹茶とよく合うね」

 

「冷蔵庫見たらさ、お酒しか入ってなかったから、外にお茶買いに行かない?」

「そうだね、行こう。晩御飯まであまり時間ないから、サッと行ってこよう」

  

 

カギを締めて保津の間を出て、「非常口」と女将さんに案内された階段で1階まで降りる。2階に上がってきた時はエレベーターだったけど、階段が部屋から近かったし、1階分降りるだけだからこっちのが楽だった。

 フロントでカギを渡し、玄関に出ると、あれ、ボクらの靴がない。

 

「今出しますね」

 猪八戒さんが玄関奥の中からボクらの靴を出してきてくれる。そっか、さっきしまわれたのか。外出る時このやりとりをいつもやるのか、大変だな。

「ありがとうございます」

「こちら、どうぞ」

 猪八戒さんは靴ベラを差し出してくださる。なんて丁寧な応対なのだ。しかしボクらは靴ベラは要らない。

「あ、どうも。でもなくて大丈夫です、ありがとうございます」

 そうですか、というニコッとした顔をして、靴ベラを下げる猪八戒さん。ボクは急いで靴ひもを結ぶ。

 

「メグルくん、靴ひも結ぶのめっちゃ速いね(笑) 手がシャシャシャーって」

「そう?(笑)」

 

 そして自動ドアへ向かう。

「いってらっしゃいませ(ニコッ)」

 猪八戒さん、なんて丁寧なフロントマンなんだ…。自動ドアが開く。ウィーン、ガー。

 

「この辺、コンビニあるのかな?」

「ちょっと待って、調べる。……ミニストップがあるね」

「それ、さっき嵐山駅で見たやつ?」

「ぽいね」

「時間だいじょぶかな? 18時45分くらいに部屋に戻ろうと思ったら、あと30分くらいしかないよ」

「渡月亭のホームページには、駅から旅館まで徒歩7分くらいって書いてあったし、多分大丈夫」

 

ちょっと早足でミニストップを目指す。フクちゃんはご機嫌だ。

 

「ふふーん♪ 私、今疲れほとんど感じないよ。旅館って好きなんだ、昔家族で旅行行った時も旅館に泊まったことあるけど、あの感じ、好き。憧れの旅館に、メグルくんと一緒にいるなんて、ここは楽園か」

 

 嬉しい。そんなおしゃべりをしながら歩いていると、割とすぐに着いた。ペットボトルのお茶と、ポテチも買った。まっすぐ旅館まで戻る。道が狭く、なのにバスがよく通るから、その度に止まって避けないといけない。「大型車通過」みたいな電光掲示板まで付いてる。

 

「おかえりなさいませ(ニコッ)。靴はそこに置いておいてください」

旅館に戻ったら、猪八戒さん。この笑顔とちょい低音ボイス、クセになる。スリッパに履き替えて、猪八戒さんから部屋のカギをもらう。2階へ階段で上がり、部屋に戻る。

 

「あー帰ってきたね。もう外出なくていいかな」

「うん、そうだね」

 時間は7時前。

 

「飲み物、どうしよっか」

 テーブルに置いてあった飲み物のメニューを見ながらボクはフクちゃんに訊く。

「どうしよっかな。メグルくんは?」

「ビールがいいかなーと思ってるんだけど…お、京懐石料理に合う日本酒ってあるな。そっか、晩御飯は京懐石だっけ。じゃあビールより日本酒のが合うのかも。」

「合いそう合いそう!私もメグルくんが日本酒にするならちょっと欲しいな。」

「よし、日本酒にしよう。種類がいろいろあるけど、京懐石に合う辛口のお酒を揃えましたって書いてあるけど、ボク辛口は苦手なので…この『なめらか』の『峰の白梅(はくばい)』にする。フクちゃんは?」

「うーん…あっ梅酒がある! 梅酒にする! でもなんか種類があって、どれがいいのかわかんない。後で女将さんに聞く」

「わかった」

 

その時、「コンコン」と部屋の扉をノックする音。

 

「失礼します。ご夕食の準備をさせていただいてもよろしいでしょうか?」

「はぁい、お願いします」

 さっきの女将さんが入ってくる。

 

「失礼します。では準備をいたします」

 

〈つづく〉

以下リンクです。ちなみにボクは渡月亭を楽天トラベルで予約しました。普段スマホ代の支払いを楽天カードで支払っていて、たまってたポイント使って2000円くらい安くなりました。

www.togetsutei.co.jp

 

 

楽天トラベル→ 静かで落ち着いた雰囲気の、心安らぐ旅館 渡月亭