嵐山の旅館 渡月亭 ~夕食 京懐石編~

「失礼します。では準備いたします」

 女将さんが部屋に入ってきて、テーブルに箸を置いたり最初の料理を置いたりしている。

 

「すみません、このメニューの梅酒に3種類あるんですけど、どんなのなんですか?」

 フクちゃんが女将さんに訊く。

「はい、はんなり京梅酒がやさしい口当たりの梅酒で、柚子梅酒、抹茶梅酒はそれぞれ柚子、抹茶の風味が楽しめる梅酒です(筆者注: 記憶がだいぶおぼろげです)」

「うーん…。抹茶は味が想像できないし、柚子はそんなに好きでもないし、はんなり京梅酒ください」

「かしこまりました。飲み方はどうなさいますか? お湯割り、水割り、ソーダ割り、ロックができますが」

「じゃあ、水割りで」

「すみません、あと日本酒の『峰の白梅』もください」

 とボク。

「かしこまりました。お持ちします」

 

 

飲み物の注文が済んで、女将さんの準備が終わるまで旅館の案内を見ていた。その中に、貸切温泉というのがあった。

 

「え、何これ、貸切温泉だって! 行きたいなぁ」

「でも、せっかく立派なお風呂付のお部屋に泊まるのに…」

 

ボクらが泊まる部屋は、ヒノキ風呂付8畳客室、と書いてあって、旅館に大浴場があるにも関わらず、プライベートバスルーム付き、という贅沢なお部屋なのだ。大浴場もいいけど、男女別だから、ボクとフクちゃんは別々に入らないといけない。それは嫌だな、一緒に入りたいなとお互い意見が一致していたので、今回このヒノキ風呂付き客室を予約したのだった。

 

「そうだよね、お風呂、部屋についてるもんね。使わなきゃもったいないね。」

 とフクちゃん。

 

 その通りだ。もったいない。

 ん、待てよ。ボクは『進撃の巨人』のリヴァイ兵士長の言葉を思い出した。

「フクちゃん、リヴァイが言ってたけど、自分を信じて、または仲間を信じて、その場でどれだけ正しいと思って行動しても、結果も正しいかどうかは誰もわからないって。だから、どうするか選ぶ時、後悔しない選択をしろって。ボクは正直、お部屋のお風呂でいいと思ってる。けど、別に貸切温泉でもいいよ。どの道一緒に入れるから。フクちゃんが後悔しない方を選んで。ボクはそれについてくから」

「うん、わかった! ありがとう。今まだ迷うから、夕食終わるまでに決めるね」

「うん」

 

 話している内に、夕食の準備が済んだようだ。席に着く。目の前には、2品、料理が置いてある。

 

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「では、お飲み物をお持ちします。失礼します」

 女将さんはそう言って、ふすまを閉めて部屋を出ていかれた。

 

「あっ今日のお品書きがあるよ」

「ん? ほんとだ。」

 

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なんかめっちゃあるように見える。今目の前にある料理は前菜と、お造り?

 

女将さんが飲み物を持ってきてくれた。また部屋を出ていく。

 

「わーこれ梅? 青梅甘露煮ってやつかな?……あっ甘い! 甘いよメグルくん! これ好きだ、もはや私にはスイーツだよ」

「これ? ……ほんとだ、甘い。梅じゃないみたい。やさしい味だ」

 

そう、前菜の料理は全てやさしい味付けだった。揚げ物とかファストフードのようなガツンとくる味ではなく。日本酒がとっても進む。

 

「お刺身は…鯛とマグロはわかるけど、この平政というのは?……う、うまい! こりこり、ぷりぷりしてる!」

「おいしいねぇ」

 

「失礼します」

 女将さんが次の料理を持ってくる。

こちら煮物椀でございます」

 

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「この白い魚はなんですか?」

 フクちゃんが訊く。

「鱧(はも)です」

「へー」「ほー(ボク)」

 

「では失礼します」

 あと何回行ったり来たり繰り返すのか。女将さん大変だな。

 

「う、うまー…! 鱧好き。」

 フクちゃんは嬉しさのあまり腕を上下に振る。

「…うま。ほろほろ口の中でほぐれる。出汁も柚子風味でおいしい。やさしい」

 ボクはさっきから日本酒が止まらない。

 

次に来たのは、「御凌ぎ(おしのぎ)」。意味がよくわからない。料理は穴子の握り寿司。

 

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当然うまい。当然日本酒と合う。

 

「わかった、これ、お品書きに書かれてる料理が1こずつ運ばれてくるんだ。今「御凌ぎ」まで来たから、あと半分だよ。一品一品の量は少なめだし、全然いけそう」

「そうか、そうだね。この量だったらフクちゃんでも大丈夫そうだね」

 

次に来たのが「焚合せ」。

 

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凝ってるなー。カボチャが葉っぱの形してる。野菜の煮物ですね。

 

「失礼します。こちら、焼物です。このお酢につけてお召し上がりください」

 女将さんが次に持ってきた料理は、鮎(アユ)の化粧焼き。塩焼きですね。

 

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「メグルくん、魚きれいに食べるの上手そう」

「いや、全然だよ。苦手だ。アユって骨多いね、しかも大人な味というか。うまっ!てなる味じゃないね。ボクは焼き魚よりオムライスとかハンバーガーとかの方が好きだな」

「母が言ってたけど、年を取ったら自然と焼き魚とかが欲しくなるらしいよ。今はまだ若いから、ハンバーガーとかの肉!っていうのが欲しくなって普通なんじゃない」

「そっか、そういうもんか」

 量的には少ないので、食べることはできた。

 

次は、留肴(とめさかな)。

 

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「茶碗蒸しだ」

「私茶碗蒸し好きー。食べるのすごく久しぶり。……おいしー!」

「美味しいねぇ。」

「このやわらかいのなんだろう?」

「これがフォアグラじゃない? お品書きに書いてある。すごくやわらかいね。美味しい。」

 

次は、止椀、御飯、香の物が一度に来た。止椀は赤出汁で、香の物はお漬物だった。フクちゃんは赤出汁が苦手らしく、ボクが美味しく頂いた。

 

「メグルくん、漬物で何が好き?」

「えーっとあの、きゅうりのキューちゃんみたいなやつ」

「あ、私もきゅうりのキューちゃん好き。」

「フクちゃんは?」

「私はたくあん! ダントツでたくあん。」

「たくあん。うん、ボクも嫌いじゃない」

 

いよいよ最後だ。水物。デザートだ。

「食事が終わりましたら、内線電話でお呼び下さい」

「わかりました」

 

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「このアイスうまい…! 黒豆のもちっと感が黄粉アイスと合う」

「合うね! うまいね! さくらんぼも美味しい。私さくらんぼ好きなんだ」

「そっか、うん、美味しい。久しぶりだなさくらんぼなんて」

「メグルくん、スイカも美味しいよぉ~」

「(笑) そんなスイカ農家さんみたいな言い方されても。美味しいねぇ。フクちゃんはフルーツ好きだよね。」

「フルーツは美味しいよぉ~」

「(笑) スイカ農家さんはフルーツ全般がお好きですか。ん、この白玉を生八つ橋で巻いたのもうまい」

 

デザートはかなりうまかった。最後まで凝ってる。ボクらはすごいちゃんとした旅館に来たようだ。

 

「あー食べたねー。フクちゃんお腹いっぱい?」

「うん。でも量が全部ちょっとずつ来たから、無理もしてないし、ちょうど良かったな」

 時間は20時半くらいだった。19時から食べ始めて、じっくり1時間半もかけたのか、すごい。

 

「それで、貸切温泉はどうする?」

「うーん…。リヴァイの話で言うなら、せっかく旅館来たし、後になって入っとけばよかったって後悔するのも嫌だから、行きたい!」

「わかった、行こう。じゃあ食事の片づけ来てくれた時に女将さんに頼もう」

 

ボクは内線電話をかけた。しばらくして女将さんが来た。

 

「あの、貸切温泉を利用したいのですが、今日はまだ予約空いてますか?」

「確認して参りますので、少々お待ち下さい」

 

 

 

「23時から45分のご利用でしたら、お取りできますよ」

「それで、お願いします」

「かしこまりました。ではお時間になりましたら、フロントにお越しください。あと、お布団をひいてもよろしいでしょうか?」

「はい、お願いします。」

 

もう一人スタッフの方がやってきて、手際よく布団をしいていき、女将さんたちは部屋を出ていった。

 

「わー! ふとん気持ちいいねぇ!」

「気持ちいいねえ。今日は遊び疲れて、お腹いっぱいで、もう寝てしまいそうだよ」

「ダメダメ。温泉入らないと」

「でも結構時間あるね。まだ21時前。どうしようね」

 

〈つづく〉

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京料理、京都嵐山温泉の老舗旅館「渡月亭」公式ホームページ

 

楽天トラベル 京都 嵐山温泉 渡月亭