嵐山の旅館 渡月亭 ~朝食からチェックアウトまで~

朝。

「メグルくーん、起きてー」

「ん」

 

フクちゃんに起こしてもらった。おかしいな、スマホでアラームかけといたのに。

 

「メグルくんのスマホ、あそこで小さな音で鳴ってるよ」

「あ、ほんとだ」

 

少し離れたところにあるコンセントプラグに充電器とつなぎっぱなしにしてあるボクのiPhone。小さな音量でアラームに設定した“Another Day of Sun”(映画『ラ・ラ・ランド』の) が鳴っている。これじゃ起きれん(笑) いつ音量を小さくしたんだっけ、忘れた。

 

「フクちゃん起こしてくれてありがとう」

「うん」

 

フクちゃんはまだ浴衣姿で、歯磨きをしている。よし、ボクも。シャコシャコシャコ…

テレビがついている。フクちゃんがつけてくれたんだ。『仮面ライダーエグゼイド』があってる。よくわからないが、敵とバトルしている。歯磨きしながら鏡で自分の頭を見る。はねている。いつもこうだ、ボクはクセっ毛で、朝起きたらまず風呂場へ行って髪を濡らして寝ぐせを直す。

 

「メグルくん、お風呂場少しでも使えてよかったね」

「うん。何も使わないよりはよかった」

 

部屋についているプライベートバスのヒノキ風呂の浴槽は使わず、シャワーの水だけ使う。なんって贅沢なんだ。じゃばばば…水が冷たくて気持ちいい、目が覚める。しかし昨日は貸切温泉にしてよかった。旅館気分を味わえた。今こうしてプライベートバスも使ったことだし、あとは朝食を食べるのみだ。

 

髪をドライヤーで乾かし、服を着替え、浴衣をなんとなくたたんで置いておく。テレビは『キラキラ☆プリキュアアラモード』になっている。前にたまたま見た時の、妖精ペコリンの一言が忘れられない。「お腹ぺこぺこペコ~」

 

「ペコ」が口ぐせの子にこのセリフを言わせるのはどうなのだろうか。ぺこぺこよりももっとお腹が空いている状態をぺこぺこぺこというのか、と初めて見た人は思うんじゃないか。でもその場合ペコリンは「お腹ぺこぺこぺこペコ~」と言うことになってしまう。ぺこぺこうるさいな、考えるのやめよう。

 

「よし、朝ごはん食べに行こう」

「うん。荷物は?」

「置いてこう」

 

朝食券2枚を持ち、保津の部屋を出る。フロントで

「おはようございます。朝食はこちらの地下通路を通っていただければ行けますよ」

「おはようございます。わかりました、ありがとうございます」

 

地下通路で道路を挟んだ向かいの館とつながってるんだ、便利だ。てくてく歩いて朝食会場に着く。朝食券を旅館のスタッフさんに渡すと、席まで案内される。大きな宴会場だ。椅子とテーブルが点在していて、ボクらの他に4組くらいいる。

 

「昨日の女将さんもだったけど、旅館のスタッフさん、若いね」

「うん、きれいだねぇ」

 

朝食の御膳が運ばれてくる。会場はとても静かで、カメラのシャッター音すら邪魔に思えるほどだ。ボクのiPhoneは「カシャ」とはっきりシャッター音が鳴ってしまうので、躊躇していると、

「私のiPhoneは音小さいから、撮ってLINEで送ってあげるよ」

「フクちゃんありがとう、お願いします」

 

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すごい…。小鉢が7こも。鮭の塩焼き、煮物、だし巻きたまご、きんぴらごぼう、いんげんの煮びたし、小松菜っぽいのの煮びたし、ちりめんじゃこ。みそ汁の他にもう一つ椀があって、梅茶漬けっぽいのが入ってる。白飯、漬物、海苔、湯豆腐の土鍋と薬味。こんなちゃんとした朝食、久々だよ。いつもコーヒーと小さなドーナツ1ことかなのに。

 

「食後のデザートでコーヒーと紅茶がありますが、どうされますか?」

と旅館のスタッフさん。えっデザートもあるの。

「私、紅茶で」

「ボクはコーヒーで」

「お二人とも、冷たいのでよろしいですか?」

「はいっ」

 

食べ始めることにする。顔を見合わせて、笑顔で、

「いただきまーす」

 

「朝食も非日常だね。すごい静か」

フクちゃんが言う。ボクらのテーブルは窓際にあり、窓は床から天井までガラス張りで、外の景色がよく見える。家とか林とか。とにかく自然が、緑が多い。

「うん。外の時間止まってるみたいだね」

道路が見えない。だから車が通るの見えないし、特に人も見当たらないので、本当に時間が止まってるみたいなのだ。

 

湯豆腐の鍋が静かにぐつぐついっている。蓋を取り、薬味を入れたタレにつけて食べる。うまっ! やさしい味。フクちゃんはだし巻きたまごを満面の笑みでほおばっている。

 

「おいしー♡」

ボクはフクちゃんがおいしそうに食べてるの見るのが好きだ。すごくいい笑顔してるから。

 

ボクはフクちゃんより先に食べ終わる。フクちゃんは食べるペースが落ちてきている。やっぱり朝からこの量はフクちゃんには少し多かったんだ。でも残さず食べた。

 

スタッフさんが御膳を下げて、デザートを持ってくる。写真を撮り忘れた。一口サイズのチョコレートケーキでした。

 

「おいしいね」

「うん。フクちゃん、紅茶にミルクはいらないの?」

ボクはコーヒーフレッシュを指さす。

「うん、それ、コーヒー用のかと思って。本当の牛乳なら欲しいな、乳飲料LOVEだから。紅茶ならストレートでも飲めるよ」

「そっか」

「メグルくんはブラックで飲むんだね」

「うん。甘いケーキにはブラックが合います。あま、にが、あま、にが、でいくらでもいけちゃう」

 

デザートを食べ終わり、朝食会場をあとにする。その時、昨日の女将さんが「ありがとうございました」って声かけてくださって、嬉しかった。

 

部屋に戻ると、布団が片付けられていた。

「あれ、妖精さんが片付けてくれたのかな?」

妖精さん(笑)」

長居してしまって、旅館の人に申し訳ない。もうチェックアウトの10時前なので、荷物をまとめて部屋を出た。フロントで猪八戒さんにチェックアウトをお願いする。昨日の貸切温泉とか、夕食のお酒とかの料金を支払い、領収書をもらう。

猪八戒さんは靴を出してくださる。

「ありがとうございました」

いえ、もう、こちらこそ素敵なひとときをありがとうございました。の意を込めて

「ありがとうございました」

渡月亭を出る。ウィーン、ガー(自動ドアね)。

 

「オルゴールのお店、寄っていい?」

「いいよー」

昨日来た時にフクちゃんが気になっていたお店。渡月亭のすぐ近くにある。「京都オルゴール堂」

 

公式ホームページ 京都オルゴール堂 嵐山店

 

いろんな曲の、そしていろんな仕掛けのオルゴールが並んでいる。ジブリコーナーがある。わかるわ、ジブリの音楽はオルゴールに向いてる。お店の奥に、J-POPの曲のコーナーがあった。ラッドウィンプス前前前世が売り切れている。

 

「見てメグルくん、KAT-TUNのReal Faceがあるよ。鳴らしてみよう」

「うん。……これは、ちょっとオルゴールにマッチしてないのでは(笑)」

「ねー(笑)」

 

特に何も買わず、オルゴールを楽しんで出た。ひやかしでごめんなさい。

 

「帰り道、どうしよっか」

「せっかくいい天気だし、川沿いを歩こうよ」

「いいね!」

 

桂川に沿った砂利道は、朝の10時でももう人がたくさんいた。そしてとてもよい景色。

 

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自撮り棒で写真を撮ったりしながら歩く。すると、ソフトクリームを売っているお店が。

 

「うわー抹茶ソフトだって。おいしそー。バニラと抹茶のミックスもある、いいなー」

「お芋ソフトとかもある。いいなぁ」

ということで、ソフトクリームを買うことにする。お店横の椅子に座ってなめなめする。フクちゃんは抹茶とバニラのミックス、ボクはお芋ソフト。

 

「ちょっと交換しよー」

「しよー」

お互いの食べ物を分け合うのは、今や当たり前のようになった。フクちゃんと付き合うまで、このシステムはボク採用してなかった。でも、やってるうちに慣れてきて、その良さがわかってきた。相手の頼んだものもつまめる、便利なシステムだ。最近はボクからも言えるようになった。この「交換しよー」はボクである。

 

「メグルくんはコーンすき?」

「うん」

「私はねー、苦手。パサパサしてて、特に目立った味もないから」

「フクちゃんはパサパサしてるの苦手だったね」

 

とか話しつつ、食べ終える。また駅に向かって歩き出す。

 

駅は、これまた降りてきた人でいっぱいだった。すごいな、嵐山。ボクらは今から帰るけどね。ああ、楽しかった! 付き合って5周年にいい思い出ができた。また旅行行きたいな。

 

〈おわり〉

以下リンクです。

京料理、京都嵐山温泉の老舗旅館「渡月亭」公式ホームページ

 

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