なぁ、スズメくん。ボクの生き方は中途半端ですか。

深夜。ベッドでゴロゴロしながらノートに日記を書いている。

 

チュンチュン。

 

窓の外でスズメの鳴き声がする。すごく近い。網戸のすぐそばっぽい。カーテンをめくり、見ると、いる。逃げない。チュン。網戸を開けてみる。チュチュン。バサササ…。ボクの頭の上に留まる。虫が入ってくるの嫌だから網戸閉める。ガラララ。

 

…なんなんだこの状況。スズメの脚が髪の中に入って頭皮に少し触れている。チュン。バササ。スズメがベッドに降りる。ボクと相対する。目が合う。

 

(こんな遅くに呼んで、聞いてほしい話って何?)

 

「うわっ、頭の中で自分の声が勝手に鳴る。…おまえか、今の」

 

(そうだよ。ボクの質問聞いてた?話って何?)

 

「えっ、あ、ごめん。何って、ボクの生き方って中途半端かなって考えてたんだけど、別におまえを呼んだつもりはなかったよ」

 

(ひどいなそれ。こっちは話聞いてほしいって呼ばれたから来たのに。いいから話せよ)

 

「ごめん。うん、そうする」

 

するとスズメは羽ばたいて、ボクの肩に留まった。ボクは今ベッドの上であぐらをかいている。

 

「今ボクってさ、自分の生活費働いて稼ぎながら一人暮らししてて、余った時間でもの書いてるやん。それはボクが親に物書きになりたいって告白する勇気がなくって、内緒でやるしかないからなんだ。もし実家で生活させてもらえるんなら、もっと書く時間増えるやん。早く結果出ると思う。でも全くそんな自分想像がつかない。いい年して働かずに何親のスネかじって家にこもって書きものしてるんだってなる。

 

逆に、もの書くのすっぱりと諦めて、歯科技工の仕事に専念する勇気もない。朝から深夜までラボにいて、仕事するのって苦痛だよ。ずっと誰かと同じ部屋にいてさ、上下関係を意識して人と接しなあかんし。歯の形こだわって作るのは好きよ。でも1日中人のために歯作ってて何してんだ自分って思うし、もっと一人の時間が欲しいって思う。

ボクばっかしゃべってるけど、聞いてる?」

 

チュン。

 

「チュンて。聞いてるのね。ぶっちゃけ、今の状態はムリがなくて気に入ってるんだ。仕事は午後から出勤で、仕事終わって0時くらいから午前中までは一人になれるから。多分ラボの人も、缶ヶ江くん最近落ち着いてるな、前は深刻そうな顔で仕事してたり、先輩からのちょっかいに悩んで仕事どころじゃない時もあったのに、って思ってるよ。ただ少しずつしか書けないから、このまま続けてていいのかなーって、よく悩むんだよね」

 

(続けてていいのかなーって言うけど、メグルは本当はどうしたいの?親とか彼女とか、自分の大事な人がどうしてほしいと思っているかは置いといて)

 

「え?置いといて?……そんなん、この状態を続けたいに決まってるやん。この今の状態が一番ストレスなくもの書けるんだ。一人暮らし生活に必要なお金は自分で稼げてるし、もの書く時間もある程度まとまってとれるから」

 

(なんだ。答え出てんじゃん。)

 

「うん。でもいいのかなーってすぐ思ってしまう。同じことブログに何回も書いてるよ。ブログ見に来てくれた人は、またこの話かってなってるよ絶対」

 

(それはメグルが人一倍考えるクセがあるからでしょ。そもそも物書きなりたいんなら他の仕事辞めて専念すべき、それが無理ならすっぱり物書き諦めて今してる仕事に専念すべき、って誰が決めた?メグルじゃね?)

 

「うっ」

 

(0か1かみたいな考え方好きだよな。大学生の頃に教授から言われたよね。世の中には白黒つけられないグレーな問題がゴロゴロあるのよって。むしろグレーだらけよって)

 

「なぜ知ってる?いや、ちっちゃいことは気にしない、メグチコメグチコ。…そうか、ボクが自分で0か1かの選択肢しか用意しないで、自分を苦しめてたのか」

 

(そんで、今自分、0でも1でもないし。ちょうどいいと感じるとこ見つけてんじゃん。それじゃダメなの?)

 

「…いいの?むしろ」

 

(それはメグルが自分で決めることだ。こんな通りすがりのいちスズメが決められることじゃない。ボクが決められるのは自分の人生、スズメ生だけだ。)

 

「そう、だよね。この状態にもってくるまで自分なりにがんばってきたんだよね自分。許されるなら気が済むまでこの状態でいたい」

 

(なんかおそるおそるだな。まあ、よかった。もっと長くなるかと思ってたよ。ラッキー。ボクは寝床に帰って寝るとするかな。網戸開けておくれ)

 

「あぁ、うん」

ボクはカーテンをめくり、網戸を開ける。ガラララ。

「ありがとう、来てくれて」

 

チュチュチュチュン。バササササ… スズメは夜の闇に消えていった。